蒼々と月冴えて午後九時の道

 明月に小雨降りけり港町  田中貢太郎

 明月やふるさとびとにとりまかれ   京極杞陽 くくたち上巻

 明月や一声くもる天津雁  許六

  明月や丸きは僧の影法師  夏目漱石 明治二十九年

  明月や十勝の果の行在所  山本駄々

  明月や家賃の外の坪のうち  野馬 俳諧撰集「有磯海」

 明月や打上げられし磯の草  石塚友二 光塵

 明月や拙者も無事でこの通り  夏目漱石 明治三十年

 明月や流るゝ苫の露光る  幸田露伴 拾遺

 萩薄生け名月の夜となりぬ  アロマ

 明月や浪華(なにわ)に住んで橋多し  夏目漱石 明治二十九年