異端の天才絵師

 木下昌輝の「絵金、闇を塗る」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、優れた才能を持ちながら狩野派を破門され、土佐の田舎で絵を描き続けた異端の絵師林洞意(弘瀬金蔵、通称絵金)の生涯を描いた作品である。
 一章「岩戸踊り」:自らも南画を学んだ土佐の豪商仁尾順蔵は、日本画壇に君臨する狩野派に対抗し、土佐藩の画処を支配する野望を持つ。そのために順蔵は画才を持つ髪結いの息子の通称絵金(金蔵)、絵虎(虎七)の兄弟に目を付ける。順蔵は当初、年若である六歳の絵虎を絵師として育成しようとしたが、十二歳の絵金