名探偵夢のオールスター競演

 芦辺拓の「帝都探偵大戦」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家である。本書は、江戸から東京まで、花の都で繰り広げられる名探偵(目明し)達と犯罪者の戦いを描いたクロスオーバー作品であり、江戸時代(「黎明篇」)、第二次世界大戦前(「戦前篇」)、そして戦後(「戦後篇」)の三篇からなる。本書の各篇は、ストーリーそれ自体がメインではなく、登場人物の多彩さ、著者の博覧強記ぶりを楽しむものである。以下の登場人物には、作者を付記する。
 「黎明篇」:本篇は三河町の半七(岡本綺堂)の回顧談の形を採っている。半七は八丁堀同心の坂部治助の命により、二度刺された女