急ぎ行き夏の舗道に汗しとど

 汗の目に甕棺あかし吉野ヶ里  鈴木しげを

 汗の目の告ぐるまことにうたれけり  岩井野風男

 汗の目はかがやき黄塵の頬はとがり  長谷川素逝 砲車

 汗の眼がベルトに巻かれまいとする  棟上碧想子

  汗の眼にあらゆる蓋のある蓋屋  川崎展宏

  汗の瞳に我子溢れつゝまろびくる  西島麦南

  汗の粒貨車を外光に押しいだす  片山桃史 北方兵團

 汗の耳老眼鏡を落しけり  黒田櫻の園

 汗の肉打ちつけん空の蒼さかな  中島月笠 月笠句集

  汗の肋へ五指あて何に攻めらるゝや  川口重美

  汗の肌傷つきやすく我鬼忌過ぐ  橋