「流転の海」(第6部 慈雨の音)は人と人の繋がり描く

「流転の海」(第6部 慈雨の音) 宮本輝著 新潮文庫
平成26年3月1日発行
ー「遊女の墓 みなふるさとに背をむけて、じゃ」
そう熊吾は教えた。伸仁は指を折って文字数をかぞえ、575ではないが、それでも俳句かと訊いた。
「自由律俳句っちゅうて、575とか季語にはこだわらんらしい」
「命までかけた男がこれかいな」
俳句は「詠む」じゃが、川柳は「ものす」じゃ。
「俺に似よ俺に似るなと子を思ひ、とか」
「わしは、岸本水府っちゅう人の川柳が好きじゃ。道頓堀の雨に別れて以来なり。これが、わしのなかの不動の一番じゃのお」
 日本の無条件降伏による戦争終結が1945年