連載:年をとるのも悪くない

「孤独」

台所の窓辺にスマホを立て掛ける。イヤホンの方が「自分だけ感」を満足できるが、周りの気配も感じていたい。

6時半はまだ薄暗い。外に出ると明るい満月が笑っている。

自転車に乗るときにはイヤホンは危険だから聞かない。

「朝の空を見上げて
今日という一日が
笑顔でいられるように
そっとお願いした」

声に出して歌う。前から子犬を連れた爺様が来た。
「おはようございます」

急坂は自転車に乗ったままは、まだ一度しか登っていない。もちろん立ち乗りで。だが、挑戦はしない。早朝に頑張り過ぎて心臓がイカれたら、笑えない。同世代の女性が右側を歩いている。こちらにも挨拶