破天荒な人生

 西條奈加の「無暁の鈴」を読了した。著者は時代小説作家で、2005年、「金春屋ゴメス」で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して作家デビューしている。本書は、仏教の世界に失望し、幼い時に預けられた寺を出奔した武家の子供が、殺人を犯して八丈島流刑になるが、赦免された後に再び仏教界に戻り、厳しい修業を経て即身仏になるまでの、破天荒な人生を描いた時代小説である。
 主人公の垂水行之助は、下野国宇都宮藩の名家である垂水家の庶子として生まれ、六歳まで母親の実家で育つが、母親が亡くなったため垂水家に引き取られる。垂水家には制裁の子供が二人いたが、正妻は頭が良くて