西條奈加の「心淋し川」を読了した。著者は時代小説作家で、2005年、「金春屋ゴメス」で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して作家デビューしており、本書で2021年第164回直木賞を受賞している。本書は、千駄木の谷底にある心(うら)町と呼ばれる、ほとんど流れのない心(うら)川というどぶ川の、川沿いに並ぶ古い裏長屋に住む人々の姿を描いた、時代小説の連作短編集である。各篇に共通する登場人物は裏…
西條奈加の「無暁の鈴」を読了した。著者は時代小説作家で、2005年、「金春屋ゴメス」で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して作家デビューしている。本書は、仏教の世界に失望し、幼い時に預けられた寺を出奔した武家の子供が、殺人を犯して八丈島流刑になるが、赦免された後に再び仏教界に戻り、厳しい修業を経て即身仏になるまでの、破天荒な人生を描いた時代小説である。 主人公の垂水行之助は、下野国宇都…