「西條奈加」の日記一覧

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西條奈加 の 姥玉(うばたま)みっつ

★3.2 お麓は幼馴染の2人と麻布北日ケ窪町のおはぎ長屋に住む。お麓の1つ下がお菅、2つ下がお修である。お麓は名主の書き役、お菅は茶店で働き、お修は隠居した店からの手当で生活する。名主の杢兵衛、大家の多恵蔵、建具師の糸吉、貸本屋の豆勘なども登場する。 長屋裏の萩の原で行倒れの母子が発見された。助かったのは8歳くらいの娘のみで、この娘は口がきけなかった。3人は萩と名をつけて育てることに。だが、萩…

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西條奈加 の 「隠居おてだま」

★3.5 シリーズ2作目。6つの連作物語。子供たちによる「千代太屋」という王子権現での案内仕事、お登勢が師匠の手習い所「豆堂」、組紐の仕事場である「五十六屋」は続いている。 前作の流れから、組紐の高台が登場したり、帯留めの話が出てくることは自然なことか。ただ、錺職人の秋治と嶋屋のお楽の話を皆で徳兵衛に内緒にしたことで、後でバレ、大変なことに。隠居し、吉郎兵衛に任せたのだから、嶋屋内のことに…

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西條奈加 の うさぎ玉ほろほろ

★3.3 シリーズ3作目。前作出版から3年経過しており、すっかり忘れてしまっている。お君と松浦藩士・河路金吾との恋物語が破局となった原因も、治兵衛の前将軍・家斉のご落胤説も。 物語は年が明け、お君は19歳、昨年転がり込んだ職人の雲平は42歳、主の治兵衛はもう64歳である。 南星堂の諸国の菓子を贔屓に通って来る中間の鹿象という男が絡む事件が大きな筋。鹿蔵が地方の菓子に詳しいのは、希望…

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西條奈加 の 六つの村を越えて髭をなびかせる者

★3.7 蝦夷地探索に生涯を費やした最上徳内の一時期を詳述する。初めて田沼政権下で行われた天明5年(1785年)の蝦夷地探索から、寛政2年(1790年)の松平定信政権下での蝦夷地探索要請への再参加を決心するまで。 出羽山形城下から北へ8里の楯岡村出身の高宮元吉(後の徳内)は江戸の本多利明の音羽塾に入門し、天文学や測量、算術を学んでいた。時は工藤平助が「赤蝦夷風説考」を著し、蝦夷地調査の必要性を…

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西條奈加 の 婿どの相逢席

★3.4 商家のほっこり系の娯楽作。 楊枝屋の4男で25歳の鈴之助は新橋加賀町の仕出屋・逢見屋の長女・お千瀬から見染められ婿入りする。 大女将・お喜根、女将・お寿佐、若女将・お千瀬の3人が差配する店。ところが翌日から、店のことは何もするなと大女将の命。 暇をもてあます鈴之助だが、人の心にするりと入っていける性格、いろんな出来事に遭遇し解決していく。 店は3代にわたり女系、そこには血にまつわ…

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心淋し川 ウラサビシガワ

   ~~~ 読書感想 ~~~ 心淋し川 ウラサビシガワ  西條奈加  評価 ☆☆☆☆ 直木賞を取った作品だから・・読んでみました と言うわけでもないのですが、、 何と表題に惹かれませんか? 綺麗でしょう! 心淋し川なんて! 江戸の片隅、小さなどぶ川沿いに立ち並ぶ古い長屋。 住民たちは人生という川のどん詰まりでもがいていた。 懸命に生を紡ぐ人々の切なる願いが 胸にしみる連作時代小説…

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張形に彫られた仏様

 西條奈加の「心淋し川」を読了した。著者は時代小説作家で、2005年、「金春屋ゴメス」で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して作家デビューしており、本書で2021年第164回直木賞を受賞している。本書は、千駄木の谷底にある心(うら)町と呼ばれる、ほとんど流れのない心(うら)川というどぶ川の、川沿いに並ぶ古い裏長屋に住む人々の姿を描いた、時代小説の連作短編集である。各篇に共通する登場人物は裏…

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「毛」へんに「求」

漢字の成り立ちを考えると、奥深いものがある。 直木賞に輝く、「西條奈加」さんの本を乱読中。 その中に、「まるまるの毬」という小説がある。 この「毬」 「いが」と、かながふってある。 「まり」では? 調べると、たしかに、「毬栗」と書いて、「いがぐり」。 また、「松毬」と書いて、「まつかさ」。 もちろん、「毬藻」と書いて、「まりも」。 考えると、不思議な漢字。いや、感じ。 「毬」って、”ま…

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西條奈加さん、おめでとう! 🎉🎊

今回の直木賞は、私の大好きな作家さん『西條奈加さん』が受賞しました。 西條奈加さんの本との出会いは、デビュー作の『金春屋ゴメス』です。 出会い以後、全ての作品を読んでいます。 勿論、受賞作の『心淋し川(うらさびしがわ)』も読みました。 直木賞候補になったとき、「受賞したら良いな! きっと受賞する!」と思いました。 この機会に是非、西條奈加作品を手に取ってみてください。 *心淋し川の内…

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西條奈加 の 心淋し川(うらさびしがわ)

★3.4 6つの短編。 根津権現の北に位置する千駄木町の一角に心町(うらまち)はある。幅2間ほどの心川があり、その両側に立ち腐れたような長屋が5つ。心川は澱み、流れはないように見える。どうやらかつて崖上の武家地が崩落した窪地に、吹き溜まりのように人が住みついたのが心町のようである。 物語は様々な過去を持つ住人が見せる僅かな川の流れのような出来事。印象に残ったのは「はじめましょ」根津権現で母を待…

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西條奈加 の わかれ縁(えにし)

★3.4 離縁を得意とする公事宿の物語。 23歳の絵乃(えの)は嫁いで5年になる23歳。亭主の富次郎は金と女にだらしない男。絶望の中に知り合った馬喰町2丁目の公事宿〈狸穴屋〉の手代・椋郎(むくろう)から、離縁状取りを扱わせろとの申し入れ。7度の離縁を経験する主・桐(きり)に見込まれた絵乃はこの公事宿で働くことになった。 嫁の里の借金から逃れるための離縁の話。武家の嫁と姑の争いに両方離縁の話。離…

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西條奈加 の せき越えぬ

★3.5 箱根関所の役人の物語。 父が49歳で隠居し、武藤一之介は27歳で家督と先手組方の仕事を継いだ。小田原藩11万3千石の藩士で禄は僅か4人扶持。 友の騎山市之助とは5歳から通った多木川道場での幼馴染。騎山家は千石の別格で、市之助は藩主・忠真の中小姓を務めている。 武一(一之介)は持ち前の大らかな性格から仲間を得ていく。その仲間たちの協力を得て手柄を立て、箱根番士に抜擢された。 関所業…

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西條奈加 の 亥子(いのこ)ころころ

★3.4 シリーズ2作目。前作から2年半が経過しお君も18歳、治兵衛の出自のせいで、松浦藩士・河路金吾との間は破談となった。娘・お永の夫で左官職の修造はいい仲となった女とは別れ江戸へ帰ってきている。 そんな中、63歳の治兵衛が左手首を痛めてしまった。都合よく行き倒れで転がり込んだのが菓子職人の雲平。雲平は菓子修行の相弟子・亥之吉の行方を捜していた。武家と付き合いの多い治兵衛の弟・石海和尚(五郎…

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西條奈加 の 隠居すごろく

★3.5 ほっこり系の物語。 中山道沿いの巣鴨町で糸問屋を営む嶋屋の6代目の徳兵衛は還暦をすぎ隠居して風流の道をと考えた。だが実際に田舎に引っ込み隠居してみると退屈で仕方がない。 そんなときに訪ねてくるようになったのは孫の千代太8歳。だが千代太は人並外れて情け深い子だった。捨て犬に始まり捨て猫、そして今度は汚らしい兄妹を連れ込んでくる。 孫ともなるとその思いは切り捨て難く、ついつい何とかして…

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西條奈加 の 雨上がり月霞む夜

★3.5 「雨月物語」の完成前夜の上田秋成の物語。 養子に入った紙油問屋の嶋屋を火事で失い、妻と養母を妻の実家に預け、大坂加島の友・雨月(常盤木正太郎)の離れに寄宿する仙次郎(秋成)は38歳。 雨月がこの世を数百年も彷徨う兎の妖の取り憑いた小兎・遊戯を連れ帰った時から不思議な出来事に遭遇する。徐々に妖が見えるようになった仙次郎はある日戒安という客を連れ帰るが、常盤木家の女中のおたねには客の姿…

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破天荒な人生

 西條奈加の「無暁の鈴」を読了した。著者は時代小説作家で、2005年、「金春屋ゴメス」で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して作家デビューしている。本書は、仏教の世界に失望し、幼い時に預けられた寺を出奔した武家の子供が、殺人を犯して八丈島流刑になるが、赦免された後に再び仏教界に戻り、厳しい修業を経て即身仏になるまでの、破天荒な人生を描いた時代小説である。  主人公の垂水行之助は、下野国宇都…

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西條奈加 の 無暁の鈴(りん)

★3.5 江戸後期(1800年頃)下野宇都宮藩の家臣の子であった久斎は、庶子であったことから上野の山間の寺に入れられ3年、13歳からの物語。 寺内の理不尽から江戸へ出て無暁と名乗るが、やくざ世界での友の仇討ちで人を殺め八丈へ流罪。 22年後に赦免されるが、出羽湯殿山で1000日行を行い、最後は57歳で即身仏を目指す。 逆境でも己の生への執着に驚くとともに、悲惨な生活の中にも救いが。そしてそ…

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西條奈加 の 銀杏(ぎんなん)手ならい

★3.5 小日向水道町の樹齢300年の大銀杏、そのそばにある手習所「銀杏堂」で繰り広げられる物語、連作7編。 武家に嫁いだが3年後、子ができないことを理由に離縁された出戻り娘の嶋村萌は24歳。嫁ぐ前に父母を手伝っていた手習所の師匠を正式に始めた。 場所柄から武家や農家、職人などの子供が通ってくる。従って皆家の事情が異なり、登山(入所)や下山(卒園)の時期も異なる。もちろん子供自身の得手不得手…

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西條奈加の「猫の傀儡(くぐつ)」。

★3.5 猫のミスジが傀儡師、操る傀儡は狂言作者を目指す阿次郎。 猫の世界を守らんがために人間を使って事件を解決しようとする物語。 前任の傀儡師・順松が姿を消したため猫の頭領がミスジを選んだもの。2歳のオス、白い額に黒の三筋が走るのでそう呼ばれる。 言葉が通じないので傀儡である阿次郎をどうやって仕向けるかが問題。7つの連作だが縦糸は順松失踪の真相をつかむこと。 着想はお初と鉄のようで新鮮…

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西條奈加の「九十九藤(つづらふじ)」。

★3.3 26歳のお藤は日本橋本石町の口入屋「冬屋」立て直しのため、差配として店に入った。 武家相手の中間斡旋主体では後発の口入屋では採算がとれないのである。 使用人は7人で、番頭と中間あがりの手代3人、小僧に下男、そしてお藤が他から引き抜いたお兼という女。 お藤が目を付けたのは、西国に本店がある江戸店への下働きの下男を送り込むこと。しかし抵抗勢力も・・・。 人宿という生業に着目したのは…