秋釣瓶落としの闇に癒されて


 アウトバーン吹雪く闇夜を雪女  ツェルセン・孝子

 あぢさゐの闇夜も知らぬ深眠り  三橋鷹女

 ありと言へば闇夜もよろし桃の花  森澄雄

 いつも騒ぐ男が無口闇夜汁  田中水桜

 かき鳴らす如法闇夜の三味涼し  西本一都

 かりがねの帰りつくして闇夜かな  村上鬼城

 この秋光のいづくに闇夜ひそむなる  斎藤玄

 ふかふかと鵺(ぬえ)の流るる闇夜かな  中勘助

 ふわふわと蛍一つの闇夜かな  蛍 正岡子規

 わが町の闇夜をはねて鰯たち  坪内稔典

 わが恋は闇夜に似たる月夜かな  夏目漱石 明治二十四年

 闇夜きつね下這ふ玉真桑