連載:日常3

「春が来てしまった」

空を背景に歩いて来るその姿に妙に引き付けられた。普段は殆ど人など歩いていない歩道だ。左右に大きく揺れているあの歩き方、見覚えがある。そうだ、あの人だ。私は小学生のように手を振った。

職場を出て自転車を漕いだ。相変わらず車の往来は多いが、歩道には誰もいない。十字路は坂の上にある。気張れば頂上まで降りずに行けるが、坂に差し掛かってすぐに降りた。頑張る気になれなかった。自転車を押して歩き出した時だった。

あの男性だった。だが、今日は雰囲気が違う。帽子がないせいだろうか。

私は先日スカイツリーの周辺を歩いたことを話した。
「僕はね、松戸から歩いたことがあり