西の京散歩「余も木瓜になりたい・・・漱石」


 木瓜咲くや 漱石拙を 守るべく

        夏目漱石

夏目漱石が明治30年(1897)、熊本で英語教師をしていた頃に詠んだ俳句。「拙を守る」とは、目先の利に走らず不器用でも愚直に生きることを意味する。これが、漱石の目指すひとつの生き方だった。

 その後もこの考えは変わらなかようで、明治39年9月に初出の小説「草枕」でも、木瓜について以下のような小節がみえる。

「木瓜は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。
 そんなら真直かと云ふと、決して真直でもない。
 ただ真直な短かい枝に真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、斜に構へつつ全