龍玉の行方

 浅田次郎の「天子蒙塵 第四巻」を読了した。著者は直木賞作家であるが、自衛隊入隊や一時期企業舎弟をしていた等、ユニークな経歴の持ち主である。作風は広く、極道小説、時代小説、中国歴史小説、現代小説など多岐に渡っており、「小説の大衆食堂」を自称している。本書は、「蒼穹の昴」、「珍妃の井戸」、「中原の虹」、「マンチュリアン・リポート」に続く、著者の中国歴史小説シリーズの第五部である。本巻は第五部の完結編であり、愛新覚羅溥儀の満州帝国皇帝登極と、中国に帰国した張学良の様子が描かれる。
 満州帝国前夜、執政の愛新覚羅溥儀は健康のために日光浴を始める。その時間は、慌