連載:癌2

「誰かが頑張っていると」

コーヒーショップの生け垣に咲いている椿に立ち止まった。真っ赤な一重の花びらに黄色い雌蕊。この色の対比はいっそ潔い。自分のペースでいい。後ろも振り返らない。

今度は沈丁花だ。この花は地味の代表のような花だが、香りは誰よりも目立ちたがり屋だ。

市民の森に着いた。ゆっくりと歩いてみよう。このふかふかの大地の感触。日陰の多い小道は,、逆に陽だまりを目立たせる。

まだ細い木に札が括りつけてある。「この木を育てています。切らないでください」。苗木だけじゃない。

春はもうそこに来ているけれど、まだまだ芽吹きは早い。花を探している自分に気付く。今は走ることより花