「小説 太宰治」(檀一雄著)を読む

「小説 太宰治」 檀一雄著 岩波現代文庫
2000年2月16日発行
ー太宰の死は、彼の文芸が、終局において彼を招くものであった。太宰の完遂しなければならない文芸が、太宰の身を食うたのである。
 彼の虚構された人生は、死を選ばねば完成されぬ。彼の文芸は、彼の自殺をまたねば成就を見ない。太宰は早くから、このような執拗な妄想にのみ生きていた。「爾の為す事を速やかに為せ」と彼が聖書に関心を寄せていたのは、キリストの生涯に震撼されていたからである。
 日本の古典では枕草子と徒然草を繰り返し繰り返し精読していただろう。全く血肉の読書であった。それから円朝全集。太宰の