涙は千の言葉
君と初めて旅をした
親のあわてるのをよそに
それぞれの家を出た
正月二日
新宿発二十二時十分の夜行列車
行く当ても無い ただ二人で居たかった
無人の車内は僕たちだけのため
この旅の様に当てどない会話が続いた
不意に君が言った
「わたしよりあなたにふさわしい娘がきっと現れるわ」
僕の心は一気に奈落の底へ突き落とされた
それは聞こえの良いお断りの言葉じゃないか
上目づかいに見上げる君
「そうかもしれないね」
僕は精一杯の虚勢でそう言った
ふっと顔を伏せた君の目からポロポロと涙
千の言葉を聞