昭和ノスタルジー・Ⅴ


  涙は千の言葉



君と初めて旅をした

親のあわてるのをよそに

それぞれの家を出た

正月二日



新宿発二十二時十分の夜行列車

行く当ても無い ただ二人で居たかった

無人の車内は僕たちだけのため

この旅の様に当てどない会話が続いた



不意に君が言った

「わたしよりあなたにふさわしい娘がきっと現れるわ」

僕の心は一気に奈落の底へ突き落とされた

それは聞こえの良いお断りの言葉じゃないか

上目づかいに見上げる君

「そうかもしれないね」

僕は精一杯の虚勢でそう言った



ふっと顔を伏せた君の目からポロポロと涙

千の言葉を聞