連載:読書

「明日が二つ『そして、バトンは渡された』」

「優子ちゃんの母親になってから明日が二つになった」 

親になる喜びをこんなふうに表現しているのは初めてだ。優子ちゃんの二人目の母親になった自由奔放とも言える女性の言葉だ。栞を挟んだ。

「おいしい食事も励ましの言葉も誰かが差し伸べてくれる手さえも受け付けなくなったとしても、音楽は心や体にはいっていくだろう」

なんて心地良い表現なのだろう。

「音楽に囲まれているときは、おいしい食事の方が人を幸せにできると思ったけど、俺は誰かを幸せにできるほどの料理は作れないって思い知ったよ」

喪失感の中でしか見えて来ないものがある。音楽か料理か、迷いの吹っ切れた青