さんが書いた連載読書の日記一覧

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「本屋大賞『成瀬は天下を取りにいく』」

滋賀県に行った事などない。新幹線で通過するかしないかも判然としない。 そこに天才少女がいる。頭脳明晰眉目秀麗、こんな四字熟語じゃ言い表わせない爽快な少女だ。今風の「空気を読み」、上手に周りに合わせるとか、目立たないように生きるとか、そんなの一切無関係。 『本屋大賞』という文字の前に私は無力だが、更に『55万部突破』。だが、『成瀬は信じた道をいく』をよくよく見ると『本屋大賞受賞作続編』だったし…

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「長生きして何をしたらいいの?」:『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』

私が知りたいのはボケ防止や老化防止の「方法」じゃない。 長生きして「何をするか」だ。 樋口恵子と和田秀樹の『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』。あまりにも有名な二人だし、またもや老人問題だし、と思った。 「楽しげ」?普通は「楽しく」だろう。「楽しげ」は心から楽しい訳ではないが、楽しいフリをする、というニュアンスがある。 楽しい事がそうそう毎日ある訳が無い。楽しくない日の方…

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「同じ本を2回読むと」

またもや二回目読みをしている。私は食べた事のある美味しい料理をもう一度食べるより、食べた事のない得体のしれない料理を選ぶタイプ。珍しい。 『夜明けの全て』を2回読み、今度は『52ヘルツのクジラたち』が映画化されると知り、読み始めた。読んだのは2021年だ。ここにジャンル別に保存されているから探し出した。 なんて暗くオゾマシイ内容だろう。実の親が子供を虐待する。 年を取るのは始めての経験なの…

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「ひこばえ」

去年の今頃は何をしていたのだろう。 日記はここにしかない。連載日記『読書』で探した。『革命前夜』や『ひと』を読んでいたのか。ついこの前のような気がする。 昨日はトイレのタンクに付いた汚れを一番細かいサンドペーパーで綺麗にし、娘宅に行く事が多くついほったらかしていた外回りを片付け、鳥が食べ始めた蜜柑の皮を拾い、玄関前に薔薇の鉢を持って来た。 炬燵に入って『ひこばえ』を手に取る。重…

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「宇佐美りんの『かか』を一気に読んだ」

最初読みにくい小説だと思った。だが惹かれる。買った理由は、作者が宇佐美りんだからだ。『推し、燃ゆ』で芥川賞の。 『かか』は『推しー』とは全く文体が違う。だが、両者とも独特な観察眼と圧倒的な語彙力は共通している。 描かれているのは家族。一見家庭は崩壊しているように見えるが、濃密に繋がっている。 父親は浮気し家を出て行き、夫に捨てられた母親は精神を病み、時々しか登場しない祖母もまた…

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「『懲役病棟』」

眠りに就く前にちびりちびりと読んだ。焦って読まなくても本は待っていてくれる。 作者は垣谷美雨。『後悔病棟』を読んでいるから安心して読める。 私の知り合いに懲役に服している者などいない。大抵の人がそうだろう。女子刑務所に医師として派遣された太田香織と看護師松阪マリ江。 医師は不思議な聴診器を持っていた。患者の胸に当てると心の声が聞こえるのだ。しかも瞬時にして。 ファンタジー…

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「『ダーウィン事変』を5巻まで一気読み」

連日のホームセンター通い。リコリスの球根を買い占めたくて。 真夏に咲く、彼岸花に似たピンク色のリコリスを増やしたいと思っていた。 百日草を買った時、リコリスの球根も一袋買ったが、説明を読むと植え付ける時期は8月上旬まで。間に合う。 売り切れていた。いいものは見つけたら即手に入れないとなくなってしまう。 帰宅したら読書三昧。ところが息子が『ダーウィン事変』を数冊買って来た。…

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「芥川賞『ハンチバック』を一気に読む」

冒頭から目くらましを食らう。 <head> <title>『都内最大級のハプバに潜入したら港区女子と即ハメ3Pできた話(前編)』 </title> <div>渋谷駅から徒歩10分。<⁄div> <div>一輪のバラが傾く看板を目印にオレは欲望の城へと辿り着いた。<⁄div> ここに書かれた言葉の意味が全部分かる人は恐らく若い人だろう。尤も分からなくともこの言葉のシャワーには惹…

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「正しい性欲」

日中久しぶりにリビングで過ごした。浅井リョウの『正欲』(新潮文庫)を読んだ。 文章が堅くて読みにくい。やめようかとも思ったが他にする事も無い。 段々面白くなった。主人公の孤独が謎だ。 午前中ホームセンターに土と苗を買いに行き、忘れ物をした。大きな土の袋は忘れようもないが、花の名前を書く小さな札を忘れた事に帰る途中で気付いた。引き返すとカートの中にあった。 忘れた事を指摘さ…

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「花と本」:本屋大賞『汝、星のごとく』

芽が出ている。テッポウユリやカサブランカのように、中央に一本の太い幹があるのではなく、細く細かい葉が沢山出ている。 去年の夏、昔からあるオレンジ色のユリをあちこちで見かけた。開花期間も長いと気付き、欲しくなった。調べるとオニユリらしいが、販売されているのは「食用ユリ」とあり、半信半疑で注文した。 11月に届いた「タキイ」の食用ユリを植えたが、年末におせち料理用の百合根が売られているの…

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「好きなこと」:『少女モモのながい逃亡』

本を読んでいなかった訳ではない。ただ進まなかっただけだ。娘宅に行く日と仕事で毎日が埋まり、疲れてもいた。家に戻ると録画してある番組を深夜まで見てそのまま寝た。 不思議な小説で何処にも希望がない。僅かに見えた希望すら情け容赦なく奪われる。人間の命など何の価値もなく、世の中に正義などというものもない。 面白くないのかと言えばさにあらず、日にちを空けて読み出しても直ぐに没入出来る程面白い。…

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「芥川賞を読んだ」

昨日仕事帰りにスーパーに寄った。セルフレジを済ませた後、雑誌コーナーに『文藝春秋』を見付けた。「芥川賞発表」とある。特別定価1300円。高い。またセルフレジに行った。 最近読む本がなくなり本屋に行く暇もなく、本棚にあった芥川賞作品『コンビニ人間』と『推し燃ゆ』(『新しい世界を見せてくれる芥川賞『推し、燃ゆ』https://smcb.jp/diaries/8542588)を読み返したりした。…

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「銀河鉄道の父」

私はたった一つ詩を暗記している。教科書にも載っている『雨ニモマケズ』だ。小学校の担任が暗記させた。 この詩がカタカナで書かれた訳を知らなかった。(小説と事実を立派に混同しているが) 何故「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ」と冒頭に持って来たのか。雨にも風にも雪にも夏の暑さにも、賢治は負けていたからだ、丈夫な体じゃなかったからだ。   賢治は…

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「今時の婚活事情」:『傲慢と善良』

これも去年品川駅の駅ナカ書店で買った一冊。買った理由は今でもはっきり覚えている。店頭の目立つ処に見た事のない数が平積みされていたからだ。一画を占拠していた。 ただタイトルはちょっと気に入らなかった。傲慢と善良?傲慢な高飛車女と地味で目立たない女が出て来るのだろう。 いやいや、最初から見事に裏切られる。それが心地よい。 「人見知りっていうか、真実(まみ)ちゃんが何を話しかけても、…

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「身体を動かすのはメンドクサイが」:『運動脳』

やはり滑り止めの付いた靴下に替えるべきだった。ランニングシューズの中で足が滑る。一足1800円する5本指の靴下は走るために買ったのだが、今は全く履いていない。 夕方が近付いて来ていた。ソファから立ち上がり、薄手のウィンドブレーカーと手には毛糸の手袋をはめた。 以前よく歩いたマンションを廻る一周1·4kmの周回コース。大抵は誰かが歩いたり走ったりしているが、中途半端な時間なのか誰もいな…

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「動かないとボケる:『祈り』」

今日は好きなだけ本が読める。が、午前中はイカン。動け、動かないと確実にボケる。 何故かゴボウが2袋もそのままなので、キンピラと大きく切って煮つける。 次はリビングに掃除機をかけ、ソファカバーやらトイレマットやらを洗い、階段が汚れていたので掃除機を引っ張り上げた。 二階のトイレも久しぶりに掃除した。温かい。そうなのだ、一階のトイレが故障し冷たい。よし、昼間は二階のトイレを使おう。…

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『まち』

青年はコンビニのオニギリが百円の日だけ、買いに来る。その店に行けば知り合いの店員が声を掛けてくれる。青年はかつてその店で働いていた。 アパートの隣に住む母子は大の虫嫌いでゴキブリが出ると部屋にはいられない。青年はゴキジェットを噴射しやっつけてやり、死骸は自分の部屋のトイレに流す。小学生の娘は殆ど喋らず何かを抱えている雰囲気だ。 幼い頃に両親を亡くし祖父に育てられた青年瞬一は、…

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『革命前夜』

またもや年末の「家の中を綺麗にせねば」という焦りに背を向け別世界に飛んでしまった。 『革命前夜』須賀しのぶ著、文春文庫。作者の名前は初めて目にする。これは何故買ったのだったか。タイトルだ。 帯に惹かれた。 「文庫担当が一番読んでほしい本」 「10万部突破」 10万部も売れている本が面白くない訳がない。値段は920円+税。 こんなに面白くてジグソーパズルが一つ一つピ…

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「湊かなえの『落日』」

炬燵に寝っ転がり本を広げる。炬燵の下に敷く厚手のカバーも買ったばかりで滑りがいい。 書かれている世界はなかなか現実では出会えないような人間の内側、それも出来れば見たくない裏側だ。 意地の悪い残酷なものは苦手だが、この本は湊かなえだ。帯には『令和最高の衝撃&感動のミステリー長編』とも。ミステリーなのに感動?冒頭に「あれが虐待だったとは、今でも思っていない」とあり、引きずり込まれた。…