連載:シニア

「こんなことがこの上もなく幸せだと思う」

みんな穏やかだ。することがあるのはなんていいのだろう。一時間近く経つのに、誰一人余所見もしないし、嫌そうな顔もしない。

季節毎に花を手作りし、食堂の周囲に飾り付ける。

今作っているのは、朝顔だ。婆様達はそれぞれ大きな差があるから、一人は折紙を切り、その次はその紙を丸めてノリを付け小さな花弁を作り、今度はそれを枝に貼り付けて行く。

一つ一つはごく簡単な作業だが、短期記憶が数分しか持たない婆様は、ときどき手が止まる。すると隣の婆様が身を乗り出して丁寧に教える。普通なら同じ事を何度も教えるのは飽きが来るが、恐らくこちらも同じようにさっき教えた事は忘れてい