さんが書いた連載シニアの日記一覧

会員以外にも公開

「生き続ける怖さ」

私は怖くて仕方なった。 癌宣告を受けた時とは違う。あの時、自分が死ぬかもしれないと泣いたが、同時に「今は死ねない」と強い気持ちが込み上げた。 介護施設にいる70代半ばのA子さんにショックを受けたのは死ぬ恐怖じゃない、回復する怖さ、生き続ける怖さみたいなものだ。 A子さんは盛んに施設側を批判している感じだった。テレビもないのよ、お風呂も入れないの、と。 私は「入居した時はどんな生活をしてい…

会員以外にも公開

「人間は私が思う程ヤワじゃない」

「タダイマー!」 お兄ちゃんだ。娘が仕事帰りに学童保育と保育園に迎えに行き、三人で帰宅したのだ。いつもインターホンはお兄ちゃん。声を聞いて安心した。 私は潮干狩りをした日曜日の夕方自宅に帰り、月曜火曜と仕事した。火曜は早番で一度帰宅してから娘宅に向かった。 こんな生活は私にはキツ過ぎる。今年70歳になるのだ。ずっと考えていたが、週一の勤務にして欲しいと管理者に申し出た。 仕事は辞めたくない…

会員以外にも公開

「娘も孫も大変だ」

木曜日は10時までに病院に行けばいい。 「明日は私が送るよ」 娘は朝早いし、パパひとりで小学校と保育園に送って行くのは難しい。 問題はその次の日。私は勤務だ。 現役の頃、子供最優先でやって来たつもりだが、頭の中は仕事がかなりの部分を占めていた。今の仕事も好きだが、今は孫最優先。管理者に金曜日休む事を連絡する。 入学式翌日、お兄ちゃんはお迎えに行ったママと元気よく帰って来た。その次の日が私…

会員以外にも公開

「長生きしないでよ」

「まとまって出るようになったんだよ」 「****」 尿の話? 「健康にいいんだよね」 「長生きしちゃうじゃん」 その言い方は長生きはして欲しくない気持が十分伝わる言い方だ。 目の前を歩く女性二人連れ。実の母娘だろうか、年上女性は7~80代、若い女性は4~50代。聞きたい、その後はどう会話が続くのだろう。 娘が立ち止まった。アクセサリーを見ている。母親も立ち止まる。私が止まったら不自然だ。人…

会員以外にも公開

「『70の壁』は結構分厚い」

君子蘭が咲いた。もっと嬉しいはずなのに、今まで私は写真すら撮っていなかった。 私にはそういうところがある。咲くまではドキドキワクワクが止まらないのに、咲いてしまうと素っ気ない。 今日の予定は午後娘宅に行くだけ。掃除機を掛ける前に着替えた。スポーツウェアに。 この前久しぶりに着てみたから、スポーツブラの付けにくさは覚悟の上だ。両手を後ろに回し、手探りでホックを留める。左腕に痛みがあるし、な…

会員以外にも公開

「記念撮影」

旅に出ようと孫の世話に明け暮れようと、仕事には行く。 一日中カルタをしている婆様がいる。 「これで何回目ですか?」 「初めてだよぉ」 毎回毎回「初めてやる」感覚。羨ましい。 隣の婆様はホームに入居して何年も経つのに、「三日も家を空けたら不用心だから帰ります」と夕方が近づくと言う。 「それは心配ですね。でも今日はもう夕食の用意をしてありますから、泊まって行ってくださいね」 そう言って手を繋い…

会員以外にも公開

「一足先にお花見をした」

道の駅八千代の駐車場まで行かず、新川のこちら側で停めた。人だけが渡れる橋を渡る。 「もうピンク色が見えるよ」 息子が指差す方を見ると、見える見える、こんもりとしたピンク色。 国道16号線の八千代橋の下に数人の若者がいて、コスプレ衣装の娘(だと思うが性別不能)を囲んでいる。コスプレの若い人は去年もいた。 「綺麗!」 河津桜が満開だ。ライトアップされた桜は格別。去年狂い咲きしてテレビで放映され…

会員以外にも公開

「老眼鏡のお陰で」

ここ暫く、正確に言うと一ヶ月以上掃除機を掛けていなかった。 リビングには炬燵があるから絨毯が敷いてあるが、絨毯というものは汚れを目立たせるためにある、と言っても過言ではないくらい汚れる。 で、コロコロを掛ける。それで汚れは一件落着だが、粘着テープを一周剥がすのが面倒この上ない。斜めに切れているものもあるが、たいした違いはない。それに掃除しているのに更にゴミが出るのも許せない。 座る部分にバ…

会員以外にも公開

「優しくされるって」

「今日も自分の足で歩いてトイレに来て、オシッコ出来てよかったですね」 「そうねぇ」 A子さんはそう言ってニッコリ笑う。 娘宅にいる時、朝起きてからまた部屋に戻り、着替えたり布団を片付けたりしていた。 「バアバ〜、大丈夫?」 下からお兄ちゃんの声がする。 「大丈夫だよ〜」 そう答えてから、ちょっとすると今度は弟クンの声がした。 「バアバ〜、大丈夫?」 私は子供達の遊ぶ部屋で寝ているから早目…

会員以外にも公開

「気分が解放されるときに調子が悪くなる」

やっぱり治らない、精神的落ち込み。スマホ様教えて下さい「老人性うつ」。 「意欲や思考力の低下、  興味や喜びの喪失、 抑うつ気分」 どれもあてはまるわ。「日常生活に支障を来す」、これが加われば「うつ病」ね。 だけど、こんなの誰だって経験あるわ。いつも意欲満々、興味津々、喜びに満ち溢れた6~70代がいたらそっちの方が怖い。 ナニナニ? 「具体的には、生きがいがない、楽しみがない、漠然とした不…

会員以外にも公開

「今度は鼻水が出る」

木が大きく揺れている。春特有の強風が吹いているのだ。 「座ろう」 「そうね」 同僚も座った。 爺様婆様たちは落ち着いている。一年中温度が25℃くらいの室内にいるからか、入居者は皆元気だ。 どうもダルくて仕方ない。トイレ誘導が一段落したので、ソファに座った。直ぐにまた爺様が立ち上がるだろうが、一瞬でも座りたい。 倦怠感が異常だ。4月並みの暖かさというのが曲者で、気温の高い時が危ない。 帰…

会員以外にも公開

「若いと思っているのは自分だけ」

久しぶりに友人に会った。一週間前に階段から落ちたと言う。 2階から降りる時で、左手はしっかり手摺を握っていた。もう最後だと思ったらまだ下があり、右側からくるっと回り、柱に胸を強打した。 「この前も言ったけど、一階で寝て」 私は10年前に乳癌になり手術したが、退院した時に寝室をニ階から一階に変えた。友人が階段から落ちたのはこれで二度目だ。 それから私が今年に入り、生活習慣を…

会員以外にも公開

「落ち込んだら」

仕事帰りにスーパーに寄った。またあの男性だ。台車に花を積んでスーパーに入って行く。ピンク色の百合も見える。 買っていこう。百合があった方がいい。 蝋梅は殆ど花が落ちたし、百合は色が変わり始めると一輪ずつ鋏で切り落としたから、啓翁桜だけになった。 桜は買った時と変わらず可愛らしい花を付けているが、今まで派手な仲間がいたから寂しげだ。 体の疲れは取れたが安心してはならぬ。メン…

会員以外にも公開

「『老いては子に従え』より」

「ワッフル焼いて来ようかな」 「おお、焼いた方がいい。オジサン達と来るとみんな焼くよ」 焼き肉よりはシャブシャブ。血圧が心配なんだから。という訳で息子は『しゃぶ葉』に連れて行ってくれた。 「これで平日?」 ほぼ9割くらい埋まっている。 「サラダバーには新鮮な野菜が約20種類、たれBARは5種類以上、薬味BARには10種類以上が揃っています」 私は最初にスイーツから行く…

会員以外にも公開

「アイのない生活」

録画していたドラマ『となりのナースエイド』をもう一回見よう。 コミカルな要素とミステリアスな要素があり、ナースエイドと呼ばれる看護師の補助をする若い娘が、異常に高い医学知識を持っている。 何かを抱えているが、とにかく仕事にまっしぐら。周りの空気など読まず、患者を救う事しか考えていない。 自宅に戻ると録画していた番組を見る。真っ先に見るのは朝ドラ『ブギウギ』。主人公の可愛らしさは…

会員以外にも公開

「サクラソウが咲いた」

土曜日は弟クンを3時半に保育園に迎えに行き、いつも通り公園に寄った。朝見掛けた弟クンの大好きな女のコがいて、弟クンは一緒に遊んだ。バアバなど見向きもしない。 帰宅してからはプラレールだ。一人で上手に線路を組み立てた。 「バアバ、大好きだよ」 じっと私を見て言う。私は何となく元気がなかったのだろう。こんな小さな子供に励まされている。 夜はお兄ちゃんは寝たが、弟クンは何度言っても…

会員以外にも公開

「誰でもいいんだよ」

「ボクのだよ!」 「○○クンの!」 始まった。土曜の朝はママが早出でもういない。バアバには制御不能だ。ゲーム機を取り上げ、パパに託した。お兄ちゃんはパパの部屋に行き、弟クンはバアバと歯磨き着替えと進めた。幸いまだお兄ちゃん程ゲーム機に執着しない。 「○○ちゃん、バアバとごみ捨て行こっか」 「行く行く!」 しっかり防寒し、二人でゴミ袋を持った。 「お手伝い〜、お手伝い〜」 …

会員以外にも公開

「高齢者の働き方改革」

「あれだと△△さんの言う事しか聞かなくなるよね」 同僚が話し出した。私と同じ事を感じている。 私は私自身のミスが一番コタえていたが、仕事がキツくなっている事や同僚職員のやっている事にも疑問を感じていた。 自分がやったミスは同僚もやっている事もある。あけっぴろげに話し、お互いに補い合えばいい。そうやって来たではないか。 退職まで行く前に、先ずはこの一人で抱え込む傾向を軌道修…

会員以外にも公開

「疲れていた」

ランドセル?!まだ朝の7時前、小学校低学年の男児が二人、交差点に向かっている。 部活動の朝練習だろうか、バスケットボールが入っているような膨らんだ袋を肩から掛けているし、水筒も持っている。 二人は歩道橋に向かった。渡ればそこが小学校だ。 引き返そう、娘が起きて来たら心配する。今度は駅のタワーマンションが真正面に見える。私はこれを長く見ていたくて歩いて来たのだ。 朝一番…

会員以外にも公開

「ヒートショックを防ぐ入浴法」

職場の先輩に入浴法を教えてもらったので早速やる事にした。 お湯に浸かってそのまま浴槽の中で体を洗うのだ。 脱衣所や浴室を温めるためにお風呂の蓋をしないで給湯するのは当然だが、浴室にある排水口から冷たい空気が入って来るので、スポンジを置いた。 お湯に浸かり、ある程度温まったらそのまま洗顔し体を洗う。洗髪はお湯の中で立ち膝になり、頭を外に出して洗う。最後にシャワーで洗い流す。 …