29歳の膵臓がん

 夏川草介の「新章神様のカルテ」を読了した。著者は、長野県の病院で地域医療に従事する現役の医師で、シリーズ第一作の「神様のカルテ」により第10回小学館文庫小説賞を受賞している。本書は、信濃大学医学部医学部に入局するとともに、大学院で研究を行う主人公栗原一止の激動の日々を描いた連作短編集である。
 主人公栗原一止(イチさん)は、大学病院で消化器内科医として勤務を始めて2年目になるが、「引きの栗原」は相変わらずである。一止の下には、四年目の内科医の「利休」こと新発田大里と、一年目研修医の「番長」こと立川栄太が配属されており、「栗原班」の班長は助教の北条医師で