哀しい女性達のシェルター

 篠田節子の「鏡の背面」を読了した。著者は直木賞作家であるが、ミステリー、SF、ホラー等、多岐な分野で活躍している。本書は、薬物依存症の母親とその赤子を火事から救い出すために亡くなった、日本のマザー・テレサとも呼ばれた「聖女」の、隠された正体を探し求める人々の姿を描いたミステリーである。
 信濃追分の近くにある、DV、薬物やアルコール、性暴力被害等から避難する女性達のシェルターである新アグネス寮に落雷があり、老朽化した建物で火事が発生する。その時、「代表」の中富優紀が二階で、赤ん坊を連れて逃げ遅れた薬物依存症患者の瀬沼はるかを救出しようとするが、「先生」