警察官の鑑とは

 葉真中顕の「W県警の悲劇」を読了した。著者はライター出身で、「ロスト・ケア」で2012年第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、作家としてデビューしている。本書は、男尊女卑の風潮が色濃く残るW県警初の女性警視へと登りつめ、さらにキャリアアップを目指す松永菜穂子と、彼女の周囲で頑張るW県警の女性警察官を描いた、警察小説の連作短編集である。
 「洞の奥」:女性警官の熊倉清巡査の父親の熊倉哲警部は、周囲から警察官の鑑と呼ばれており、清も父親を目指して警察官になったが、その父親が三屋岳で転落死体で発見される。その頃、W県では、暴力団の若頭の柏木が警察官か