心柱構造の誕生と継承

 木下昌輝の「金剛の塔」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、飛鳥、平安、戦国時代と、火災や戦乱で何度も焼失しながらも再建を重ねた、四天王寺五重塔をモティーフとした時代小説である。本書では、聖徳太子の絵姿が刻印された木製のストラップと、スカイツリーのストラップが舞台回しを務める。
 序章 技術を『盗む』:大阪生まれで一級建築士の高木悠は、大手ハウスメーカーの設計師だったが、不況で人員整理されたため、仕事のノルマは逆に過重になっていた。その激務に耐えかねた悠は、辞表を会社に郵送し、子供の時に