「内灘夫人」 五木寛之著 新潮文庫
昭和47年3月5日発行
ー森田克巳 <あの時からだ>
と、克巳は思った。あのひとと会った午後から、おれの目の前の世界が少しずつ変わってきたのだ。
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克巳がびっくりしたように、
「こんな所に内庭があるんだな」
内福を表にあらわさず、というのがこの土地のならわしだと本で読んだことを思い出しながら霧子が言った。
杏子は目をとじたまま、かすかな寝息をたてはじめた。
「あの人には、どこか謎めいた妙なところがある。
ひどく精神的な哀切な