売色御免

 朝井まかての「落花狼藉」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説をテリトリーとしている。本書は、江戸時代初期の、傾城町の吉原の誕生から浅草田圃への移転までの歴史を、遊女屋の西田屋の女将の花仍(かよ)の目から描いた時代小説である。
 物語は徳川家康が薨去した翌年の元和3年(1617年)に始まる。主人公の花仍は、日本橋の近くにある傾城町吉原にある西田屋の女将であるが、二十三歳と若く、見世の者達からも女将扱いされていない。見世の遊女達を連れて外出した花仍は、女歌舞伎の踊子達に絡まれている格子女郎の瀬川を救うため、駕籠かきの杖を振り回して大立ち回りを演じる