多指症の男達

 木下昌輝の「戦国十二刻-始まりのとき-」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、応仁の乱における相国寺の焼亡以下、時代の転機となった事件に至る24時間と、事件を彩る英雄達の数奇な運命を描いた歴史小説の連作短編集である。
 「乱世の庭」:応仁元年(1467年)10月2日酉の上刻、相国寺焼亡の十二刻前。足利将軍義政お抱えの庭師の善阿弥は、彼が義政と作庭した相国寺の庭を戦火から守ろうとしていた。義政の口利きで善阿弥は、右手の親指が二本あるために六指のましらと呼ばれる弟子とともに一休宗純和尚に会い