「本を読む女」 林真理子著 新潮文庫
平成5年2月25日発行
ー祖母の福の口癖
孫娘の「万亀」
祖父の安春
万亀が生まれたのは大正4年、大正天皇が京都御所で即位式をなさった年だ。父親の隆吉はそれにちなんで万亀と名づけた。隆吉はその時の季節や出来事にちなんで子どもたちの名前をつける習癖がある。他は上から、秋次、弥生、英子、朝美と名づけられた。
嫁の芙美はなんと見栄っぱりな女だろう。
長女を、東京の女専へあげている。
女の子まで学校にやり、福はいまいましく思った。
万亀は、本を読む場所などないのだ。
小川屋に刑事が来ることもなく、末吉はその