映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は歌舞伎「勧進帳:山伏問答」だった。

東大駒場キャンパス900番教室で行われた、作家三島由紀夫と東大全共闘による伝説の討論である。映画館へ向かう前、書店でキネマ旬報のレヴューを読むと「星1つ」しかつけない評論家が居る程であったので「どんなものか?」と思ったが、中々面白かった。

  先ず、多少の飛躍は有るが、私はこの討論を見て歌舞伎十八番「勧進帳」の「山伏問答」を想起した。山伏問答とは、山伏に身を偽り、北国に逃げる義経主従の先導役となっている弁慶と、その詮議を行う関守の富樫の間で行われる仏法に関する問答である。当時仏法とは知識階級における最高の教養であり、この問答もおそらくは当時の庶民の娯楽