連載:コロナ

「これホンモノ?」

部屋を出たときから婆様は見ていた。近づいて来ると、「ホンモノ?」と聞く。

私が婆様を呼びに行ったのだ。最高齢の婆様は最近部屋にいる時間が増えた。椅子に座って大勢の中にいるのは疲れるのだろう。

他の人があれだけ驚いてくれたのだから、婆様にも見せたい。

「触っていい?」
テーブルに置いた鉢植えがホンモノだということを、自分で触って確かめたいのだろう。

「ごめんなさい。花片には触らないで下さいね。」

婆様は立ったまま、見つめている。

「何という名前?」
「シャクナゲです。」
私はスマホに走る。厚紙に「石楠花」と書いて読み仮名を振る。

「クスノキね