部屋を出たときから婆様は見ていた。近づいて来ると、「ホンモノ?」と聞く。
私が婆様を呼びに行ったのだ。最高齢の婆様は最近部屋にいる時間が増えた。椅子に座って大勢の中にいるのは疲れるのだろう。
他の人があれだけ驚いてくれたのだから、婆様にも見せたい。
「触っていい?」
テーブルに置いた鉢植えがホンモノだということを、自分で触って確かめたいのだろう。
「ごめんなさい。花片には触らないで下さいね。」
婆様は立ったまま、見つめている。
「何という名前?」
「シャクナゲです。」
私はスマホに走る。厚紙に「石楠花」と書いて読み仮名を振る。
「クスノキね