儚くも空蝉の飴色の艶



 葵咲き紀州蒔絵の黒き艶  渡辺守夫

 庵さびれゆくにつけても冬日艶  高木晴子

 伊賀人の土間艶やかや梅擬  皆川盤水

 一粒の大粒の艶丹波栗  中山純子

 艶やかな色の手の爪桜貝  アロマ

 雨に伏す残菊にして黄なる艶  米谷孝

 雨後の日に艶厚くせり黒牡丹  飯島晴子

 炎天に訣る洋傘の絹の艶  津田清子 礼拝

 燕来てより艶めける橋の反り  能村登四郎

 艶あるは妻の手業か茶筌売  三宅嘯山

 艶なるや海のおもてのいなびかり  山口誓子

 艶ばなしさらりとありし地蔵盆  波多野爽波 『骰子』

 艶ふかき漆の花台寒の入