「流れは、いつか海へと」ウォルター・モズリイ著、ノワールな復讐譚

「流れは、いつか海へと」という題名から、この小説のテーマを推察するのは難しかった。漠然としているし、川の水は、いつか海に注ぎ込む。当たり前のことだ。

アメリカの成句を知らないからだった。原題「Sell Down the River Unto the Sea」に似通った成句があるのだと、「訳者あとがき」に解説があった。

「Sell Down the River」という成句は「裏切る、見捨てる、欺く」という意味とのこと。「昔、ミシシピ上流域の農場主が、下流のニューオーリンズにもっと楽な仕事があると偽って、奴隷を売り飛ばしていたのが語源らしい……」と。