新シリーズ開幕

 宮部みゆきの「きたきた捕物帖」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー、時代劇、ファンタジー等、レパートリーの広い作家である。本書は時代小説の新シリーズであり、北一と喜多次という、ともに身寄りのない二人の若者を主人公とした、江戸時代を舞台にした捕物帳の連作短編集である。
 主人公の一人で十六歳の北一は、幼い時に迷子になっているところを、深川元町の岡っ引きの文庫屋の千吉親分に拾われ、それ以来親分に養われており、今では親分の一番若い、末の子分になっていた。とは言え、北一の普段の仕事は、千吉親分の本業である文庫(暦本や戯作本を入れる厚紙製の箱)の振り売りで