加須屋誠「地獄めぐり」

 8月は地獄の釜の蓋も開く月ということで、本書を読んでみることにした。地獄とは暴力とエロスが交錯する世界であり、そこに落ちることを恐れる世界でありながらも、私たちの心の中深くに抱いている欲望を刺激し、興味をそそられずにはいられない対象でもあるとのことである。仏教に出てくる世界はとてつもなく単位が大きいが、地獄も例外ではなく地下3万5千km(地下五千由旬)に八大地獄が展開されており、罪の重さに応じて落ちる地獄が変わってくる。最初の等活地獄では獄卒によって責苦に合わされるよりも、地獄に落ちた亡者同士が敵対心を抱き、お互いに傷つけ合うというところからして人間と