祈念と受念

 東野圭吾の「クスノキの番人」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリーを主分野としている。本書は、とあることを切っ掛けに、その木に祈れば願いが叶うと言われるクスノキの、番人になることを命じられた青年の不思議な体験を描いた、一種のファンタジーである。
 本書の主人公の直井玲斗は、不倫の末に生まれた子供であり、父親の顔を知らずに育った。後に祖母から聞いた話では、彼の父親は彼を認知しなかったが、経済的な援助はしっかりと行っていた。しかし、彼が幼い時に、交通事故で亡くなっている。美人の母親の美千恵は、夜の水商売で息子を育てていたが、彼が小学生の低学年の時に