来し方の想い出深く綴れ織り



 花茨来し方をまた行方とす  深谷雄大

 花下に立つ過ぎ来し方は無きに似て  安住敦

 降り積みて来し方くらむ桜蕊  馬場移公子

 手廂に来し方を見て涼しかり  黛まどか

 来し方行く末その間に我のいて アロマ

 われわれの過ぎ来し方に法師蝉  山口誓子

 戦後といふ来し方青き蜜柑むく  玉城一香

 大根煮て来し方何もなきごとし  山田みづえ まるめろ

 母の日や我が来し方を子に重ね  岩波千代美

 母の里藁葺き屋根に苔生えて  アロマ

 来し方のいつしか消えてすだちの香 杉田りゆう

 来し方のくもり拭ひて初鏡  加藤 浩