暴虎を食い止める者

 柚月裕子の「暴虎の牙」を読了した。著者は、2008年に第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビューしたミステリー作家である。本書は、広島県を舞台として、マル暴刑事と極道との壮絶な闘いを描いた「孤狼の血」「狂犬の眼」に続く、「孤狼の血」シリーズの完結編である。
 本書の物語は、昭和57年6月の広島で始まる。それは、広島県警の刑事日岡秀一が広島県呉原東署捜査二課暴力団係に配属され、ガミさんこと大上章吾と出会った昭和63年6月の6年前である。その当時、大上は広島北署捜査二課暴力団係に在籍していた。喫茶店で昼食を食べていた大上は、20歳位のチンピラ