松井須磨子の後継者

 朝井まかての「輪舞曲(ロンド)」を読了した。著者は直木賞作家であり、時代小説、歴史小説をテリトリーとしている。本書は、夫と息子を捨てて27歳で単身上京し、大正後期から昭和初期に新劇を代表する女優になりながらも、数え年40歳を目前に、満38歳で亡くなった伝説の名女優伊澤蘭奢(本名:三浦繁)の半生を、彼女を取り巻いた男達の眼で描いた伝記的小説である。
 物語は蘭奢が亡くなった直後、彼女の愛人であり、パトロンでもあった出版社の中外社社主の内藤民治が、彼女に縁のあった男達を集め、彼女の遺稿集の出版を提案する場面から始まる。内藤に呼び出されて集まったのは、彼女の