連載:旅1

「色のない世界」

露天風呂は玄関を出て少し歩いた先にあるという。外に?この横殴りの雪の中を?

先ずは六階にある眺望風呂『満天の湯』を目指した。洗い場が寒くて寒くて、ざっと洗い流して飛び込むように湯に浸かった。先客が二人いた。若い娘だ。一人は肩まで湯に浸かっていたが、一人は浴槽の縁に腰掛けていた。

「よく、上がっていられるね」
一人が言う。私もそう思った。普段ならここで会話に加わるが、とにかく温まりたくて黙っていた。

ガラス窓を見た。氷の華が咲いている。懐かしい。私は子供の頃、冬の朝よくこの華を眺めた。大きな波のようだったり、縦横無尽に延びる美しい樹木のようだったり、