連載:読書

「ずっと気になっていたのに手が出なかった小説:『JR上野駅公園口』」

全米図書賞受賞!新聞の下に出ている宣伝文句がが目を引いた。切れ長の目をした作者の写真付きだ。出掛けた時は必ず駅ナカの本屋に寄る。早速探して買った。

買ったはいいが、積んでいた。作者は、柳美里。見たくないものを暴いて見せてくれる作家だと思っているし、肝っ玉の座り方も尋常ではない女性だ。それが「311」後に南相馬市に移り住んだというから、当然「311」も出て来るだろう、福島第一原発も、と思っていた。

だが、そうしたものは殆ど登場しない。ホームレスの辛く過酷な生活、というよりただ淡々とした彼の日常と過去が感情抜きで描かれる。

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