連載:薩摩よみうり文芸

薩摩よみうり俳句・2月9日(火)

俳句 淵脇 護 選

裸木や人にそれぞれ裏表       霧島 久永のり尾
(評)2月3日は立春だったが、実際は厳寒の真っ只中。裸木は冬になって葉を落としつくして枝々があらわになった木を言う。一糸まとわぬ裸木に、内面に隠し持つ人間の素性を見て取った一句。これこそ二句一章の俳句の真骨頂!

熱燗や目尻下げたる母の声      霧島 秋野 三歩
足湯して眺むる海や冬霞       霧島 池田 章
筆太はげに御大の賀状なり      霧島 内村とし尾
暮れ残る山の間(あわい)や冬の鹿  霧島 尾上 春風
波止めを波押しのぼる久女の忌   鹿児島 上坪 満代