妄想爺やの喜怒哀楽86
春が近づき暖かくなり、外を歩くのが楽しくなってくる
そんな春の人を誘うかのように、街なかに歓楽の華が咲き始めている
日が暮れると、いつの間にか街なかの外れの歩道に現れる占い師がいる
多分、折りたたみ式であろう机と椅子を組んで、人通りから離れてはいるが、座る姿がなんとはなしに、暮れの人通りに浮かぶかのような場所が彼女のいつもの居場所だ
机の上には、運勢診断と書かれた薄明るいぼんぼりのような灯りが立てられている
道行く人らを、横から誰を見るのではなく、背筋を伸ばして座っている
横幅も、縦幅も狭い机の前には、座る人を待つ椅
連載:妄想爺やの喜怒哀楽2