巨木に宿るもの

 夏川草介の「始まりの木」を読了した。著者は、長野県の病院で地域医療に従事する現役の医師で、「神様のカルテ」により第10回小学館文庫小説賞を受賞し、作家としてもデビューしている。本書は、指導教官である民俗学の偏屈な准教授のお供で、日本中を旅する女子大学院生を主人公として、学ぶことの意味を問い質す物語である。
 本書の主人公の藤崎千佳は、東京にある国立東々大学の修士課程一年目のの大学院生であり、所属は文学部で、専攻は民俗学である。彼女は大学に入学した後。柳田國男の「遠野物語」に興味を持ち、後に彼女の指導教官になる准教授の古屋神寺郎の講義を聞いて感動し、民俗