廃墟になった巨大ホテル

 アダム・オファロン・プライスの「ホテル・ネヴァーシンク」を読了した。著者はアメリカ在住のミステリー作家で、本書でエドガー賞最優秀ペーパーバック賞を受賞している。本書は、ニューヨーク州のキャッツキル山地を流れるネバーシンク川を見下ろして聳え立つ、巨大リゾートホテル「ネヴァーシンク」を舞台とした年代記である。
 ある歴史:実業家のジョージ・フォーリーは、産褥で母親を失い、養護施設で孤児として育ったが、1880年代に一頭立ての馬車のみの貸し馬車業から身を起こし、巨万の富を築くと、身寄りのない子供や悪童達を引き取り、1900年からリバティという町に属するネヴァ