ご飯が発酵した

 ボクが子どもの頃は、ご飯が饐えることがよくあった。十数人の大家族だから、大量に炊いて、冷蔵庫もなかったから、仕方のないことだったのだ。

 しかし、貧しかったし・捨てるなんていうもったいないことはしなかった。饐えたご飯をザルの中で洗って・小麦粉と混ぜて・饅頭のように丸めて・囲炉裏の灰の中に埋めて・頃合いを見て・火傷しないように気を付けて味噌をつけて食べた。ご飯が饐えていないのにそれをねだって笑われたこともある。

 これを「焼き餅」という。たぶん、これが現在の「観光田舎」で売り物にしている「おやき」の原型だろうと思う。東秩父村の直売所へ行けば「おやき」