連載:こころの風景画 Ⅰ

あなたの熱心さがお母さんを救った

今日から過去に書いたエッセイをアップしようと思う。

昨日、再び過去に出版したエッセイ集「こころの風景画」を読んで、これが10年前の私の偽らざる心かと思ったからだ。
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ある総合病院に勤務していた40代の頃の話である。

夜間や休日の急患の診療体制は医師やナースが交代制であるのは今も変わりないと思うが、その病院でも各科の医師、看護師の主任以上が、夜間休日の救急外来を所属部署の勤務以外に義務付けられていた。

その日私は日直に当っていた。昼少し前だったかと思う。中年の男性の声で電話があった。
「おふくろが腹痛えって言っているから診てくんねかな」