この戦、負けますね

 夏川草介の「臨床の砦」を読了した。著者は、長野県の病院で地域医療に従事する現役の医師で、「神様のカルテ」により第10回小学館文庫小説賞を受賞し、作家としてもデビューしている。本書は、長野県の中規模病院で、命がけでコロナ診療の最前線に立つた、医者を初めとする医療従事者達の姿を描いたドキュメント小説であり、第三波が到来した2021年1月3日から2月1日までの、「臨床の砦」の様子が詳細に描かれている。本書の主人公で、著者自身の投影と思われる18年目の消化器内科医敷島寛治は、北アルプスの麓にある信濃山病院に勤務している。同病院は病床数が200床に満たない中規模