救いのない世界

 桐野夏生の「日没」を読了した。著者は直木賞作家で、ロマンス小説、ジュニア小説の分野で作品を書き始めた後、「顔に降りかかる雨」で1993年、第39回江戸川乱歩賞を受賞し、ミステリー作家として本格デビューしている。本書は、政府が小説の内容を検閲し、自らに都合の良い作品への書き直しを作家に命じる様になった、近未来の社会を描いたディストピア小説である。
 ある日、「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会(略称:ブンリン)」から、マッツ夢井(本名:松重カンナ)という女性小説家の許に召喚状が届く。その内容は、ブンリンが彼女に審議会への出席を要請したのにも関わらず、彼