平成最悪の事件

 帚木蓬生の「沙林-偽りの王国-」を読了した。著者は現役の医者で、福岡県で心療内科を開業する傍ら、小説の執筆を続けている。本書は、麻原彰晃が率いる宗教団体のオウム真理教が起こした一連の事件の内、1994年(平成6年)6月27日深夜から翌早朝にかけて、長野県松本市で発生した松本サリン事件、および、1995年(平成7年)3月20日午前8時前後に東京都で発生した地下鉄サリン事件を中心に、事件の捜査および裁判の経緯を、医師の立場から綴ったサスペンス小説である。なお、タイトルの「沙林」とは、サリンの台湾風表記である。本書の主人公兼視点人物は、九州大学医学部衛生学教