夕近い蜩の声懐かしく



  秋立つや蜩の鳴く朝の山  松下紫人

 朝蜩ふつとみな熄む一つ鳴く  川崎展宏

 蜩の鳴き始めたる木立かな  アロマ

 蜩や夕日さし入るガラス窓  会津八一

 蜩や湯殿の外は杉木立  松下紫人

 蜩や石工を熱き風呂が待つ  中里行雄

 蜩を思へばつくつく法師鳴く  小檜山繁子

 蜩や豆腐に添へる紫蘇つみに  梧逸

 蜩や金色仏に瑠璃が見ゆ  加藤知世子 花 季

 ひぐらしにつづく朝禽梅雨明けむ  水原秋櫻子
 
 後頭に夕蜩の声一節  煙秋

 初ひぐらし畳の部屋を通るとき  北原志満子

 筋塀に来て洛北の蜩や  町田しげき