「メンチカツ、買って来たよ」
「何個?」
「一個だよ」
後ろから来たパパが言う。パパは肉屋に寄ったのだ。京成谷津駅からの道は、小さなお店が並ぶ懐かしいような商店街だ。パパは揚げ物に目がない。
「○○ちゃん、ちょっと食べる?」
「食べるぅ」
パパはちぎった。
「バアバも食べますか?」
「食べる」
パパはまたちぎる。
まだ、温かかった。衣はサクサク、中身はジューシー。特別美味しい訳ではないが、この味は格別だと思った。
「セミが鳴かないねぇ」
「あっ、セミ!」
地上1メートル程にセミが留まっている。
「雌だね」
「またいるよ。○○ちゃん、捕まえる?